おやじは荒野をめざす【カナダ編】

30年間続けた塾を閉じ、私は北極海をめざす旅に出た。物好きオヤジの旅の記録が教え子たちへの課外授業となってくれることを願って、このブログを綴る。

(20) 日本が失ったもの

 カナダに来て「あっ、こういうのいいな〜」ってのがいくつもある。昔の日本では多分珍しくなかったんだけど、今はもうなくなってしまった。日本は忙しい国だし、日本人はよく働く。働くのは大切なことだけれど、あくせくし過ぎてると私は思うんだ。便利で綺麗な「もの」は増えたけれど、心のゆとり、そういうものがいつの間にか、そして、多分だいぶ前に消えてしまった。

 ビクトリアでは、バスを降りるときにほとんどの人がバスドライバーに "Thank you." って言うんだ。大人は勿論だけれど、生意気盛りの中学生や高校生も "Thank you." って言う。ちょっとヤンキーっぽいのとか、ヒッピーみたいなの(と言って分かるのかな)とか、そういう子たちも言うんだ "Thank you." とね。パープルヘアーのモヒカン兄ちゃん、腕にはタトゥーがびっしり、革ジャンは安全ピンだらけ。流石にこいつは、、、って思ったけど、やっぱり言ったよ "Thank you."。可笑しくなっちゃうし、嬉しいし、可愛いよ。だから私も心の中で言ったよ "Thank you for saying thank you." ってね。

 次もバスなんだけど、「席を譲る」ってのがもう当たり前。バス停着いて、乗り始めたお客さんの中にお年寄りがいると、その人がまだ乗ってない段階で、若者がパッと席を立って後ろに移動する。お年寄りがバスの中に来たときには、目の前に空席がすでにある。お年寄りは当たり前のように座ると言うわけ。京王線でジイさんバアさん立ってるの気づかないふりして座ってる若者、いや馬鹿者って言ったほうがいいよね、そういうの何回も見てる。「オラオラ、気づいてんだろ。席譲れよ」って言いたいけど、そこまで度胸なくて、でも、親戚のバア様で「あんた、立ちなさい」ってずけずけ言う人いて、ま、私はまだ甘いね。話し逸れたけど、席譲るの、当たり前だよ。お年寄りは長く生きてるってだけで偉いんだし、体力的には大変なんだからね。車椅子の人、ベビーカーのお母さんなんかも同じ。そこんとこ、トライの子たちはわきまえて欲しいね。

 バスで隣の席は高校生くらいかな、ちょっと粋がってる感じの男の子だった。浅く腰掛けて足組んでるもんだから、スニーカーの底がグイッと私の方に伸びてて、態度悪いんじゃねって感じだった。ところが停留所で歩行機のじい様が乗り込んでくると、正確に言うと乗り込む前に、さっと席を立って、歩行機を横に置いてじい様が安心して座れるようにシートを直してやってた。じい様、当たり前の顔して着席。私は嬉しくなって、隣の若者に話しかけた。「君の今の行動は素晴らしいし、私まで幸せな気持ちになったよ、ありがとう」。若者は「いや、別に、、、」みたいな顔してる。「こう言うのは学校で習うの、それともご両親から言われてるの?」。「そんな、別に、、、フツーっすよ、、、」なんてやりとりしたんだ。

 カナダでは、知らない人に話しかけるのも珍しくないんだ。毎朝バス停で会う人には自然と Good morniong. と言うようになるんだ。どちらが先ってのは大した問題じゃなくて、お、この人よく会うな、、、で目が合うとニコってして Good morniong. なんだな。道ですれ違う人なんかも、目が合うとニコッとするか簡単な挨拶。ハンバーガー食ってるオヤジの近く通って偶々目があっただけなのに、オヤジ、親指立てて「美味いぜ!」なーんてやってて、別にこっちは味なんか聞いてないんだけどね。何だか、みんなフレンドリー、心が大きい。ゆったりしてる。

f:id:ilovewell0913:20190527064858j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064838j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064659j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064505j:plain

町中にも公園にも大きな木が多い。歴史の浅い国だから、昔からのものを大切にするんだろうな。それに比べると東京は、、、そうか、東京は空襲でやられちゃったっていうのがあるからね。公園で「ちょいとオニイサン、私たち盛り上がってんだから写真撮ってよ」って呼び止められてパチリ、ついでに私も入れてパチリ。

f:id:ilovewell0913:20190529113559j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064339j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527052430j:plain
f:id:ilovewell0913:20190529121120j:plain

左から ①SSLCの先生。町中で出会う兄ちゃんのタトゥーを撮りたかったのだが、この人はこの人で、ま、なかなか日本じゃありえないノリだよね ②州議会は女性の比率が高い。そういえばジュンコさんが断言してたなあ「日本は女性がもっと社会進出しないとダメです」ってね ③学校の帰り道の風景。カナダの国土は日本の約30倍近いとか ④一次・二次世界大戦の戦没者を悼むリメンバランスデー(戦没者記念日)にて。戦没者を悼むってのは、国民いや人間として、当たり前のことだよね。日本は「合祀問題」とかあって、まともにお参りもできないなんて情けないと思うよ