おやじは荒野をめざす【カナダ編】

30年間続けた塾を閉じ、私は北極海をめざす旅に出た。物好きオヤジの旅の記録が教え子たちへの課外授業となってくれることを願って、このブログを綴る。

(23) ビクトリアという町

 

 最初は「なんてのどかで安全な町なんだ」と思いつつ、観光の町特有の"退屈さ"みたいのも少しあったかな。でも、レストラン、携帯屋さん、本屋、紅茶屋、スーパーマーケット、バス、バス停で一緒になる人、いろいろなところで人と出会い、知り合いが増えるにつれ町に愛着が湧いてきた。そして、ビクトリアの美しく平和な佇まいの奥に、入植以来二百年余にわたる人々の血と汗と涙があったことを知り、この町が大好きになった。

 ビクトリアは東北地方くらいの大きさのバンクーバー島にあって、カナダのブリティッシュ・コロンビア州の州都、日本の県庁所在地みたいなとこなんだけど、大陸側(こちらではメインランドって言ってる)のバンクーバーの方がオリンピックをやって有名だし断然大きい。人口は八王子58万人、バンクーバー68万人に対し、ビクトリア9万人。気候温暖で一年を通して過ごしやすい。リタイアしたお年寄りに大人気なんだとか。ホームレスも冬になるとカナダ東部から移動してくるって聞いた。一昔以上前、毛皮やアラスカのゴールドラッシュで好景気に沸いたこともあったけど、今は観光が主な産業になっているみたいだ。

 ビクトリアという名前は、イギリスのビクトリア女王に由来しているんだ。大航海時代の最後、イギリス人のキャプテンクックによりバンクーバー島が発見され、後輩のバンクーバーさんが現在の礎を築いた。最初に築かれたのは砦だった。ビクトリア観光の中心地バスチョンスクウェアのバスチョンとは「砦」を意味していて、私の通った学校SSLCはその一画にある。植民地主義の時代、ヨーロッパ列強や新興アメリカがドンパチ血なまぐさい戦いを繰り広げていた場所で、私はのどかに勉強してたってことになるね。

f:id:ilovewell0913:20190527070108j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527065627j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527065603j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064528j:plain

左から ① 町中からアメリカ・シアトルのオリンピック山脈が見える ②バスチョンスクウェアの入り口。奥の赤い唐辛子(本当はチューリッブ)の手前にSSLCがある ③古い町並みを残すために、昔の建物の外壁を生かして新しくビルを建ててる。歴史の浅い国だからこそ古いものを尊ぶのだと思う ④バンクーバー島発見者のキャプテンクック。南極やオーストラリア探検などで歴史に名を残した人だ

f:id:ilovewell0913:20190527064228j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064112j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527052914j:plain
f:id:ilovewell0913:20190520121844j:plain

 左から ①バスチョンスクウェアには週末になると露店が出て観光客で賑わう ②おしゃれな店が集まるベイセンター1階の大きな方位標。左2人の間に「TOKYO7586Km」とある ③ベイセンター4階のフードコート。学校帰りの留学生がおしゃべりしてる。真面目に勉強する子は図書館行ってるみたい ④どういうわけかカモメがやたらと多く、糞がヤバイな〜と思ってたら私の靴の上に落ちた。すごい確率!こんなことに運を使いたくない

f:id:ilovewell0913:20190520122006j:plain
f:id:ilovewell0913:20190520121949j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527052334j:plain
f:id:ilovewell0913:20190527064637j:plain

左から ①ホームレスと一般市民との垣根がない。ホームレスも自分に自信を持って生きているみたい ②ゴミ回収のおじさん。アルミ缶やペットボトルは買い取ってもらえる。リサイクルに対する意識はかなり高い ③バスからプレートが出てきてお年寄りの電動車椅子が難なく乗り降りできる。この電動車椅子、町中でも始終行き交い、みんなが道を譲る。進化して悪路も大丈夫になったら死ぬまでフライフィッシングができるかも! ④バスの前には自転車が取り付けられる。もたもたしてると運転手が手伝ってくれる

f:id:ilovewell0913:20190527121339j:plain
f:id:ilovewell0913:20190520121547j:plain

左 ロジャースのタクヤ君 ロジャースってのはカナダでは大手の携帯屋さんなんだけど、たまたま入ったら日本人がいて、それがタクヤ君だった。私は元々スマホ・PCともドツボだから、タクヤ君の存在は本当に助かった。ロジャースとはもちろん正式な契約をしてるんだけど、本来の仕事以外のことも「困ってることあったら何でも言ってください」って軽く言うもんだから、最後は調子ん乗ってフェリーの予約までやってもらった。「スマホ音痴」「ネット決済嫌い」の私にとって、タクヤ君は何と頼り甲斐のある存在だったことか!

右 サンドイッチ屋のメイおばさん こっちの食べ物ってのは味に「間」がない。ケチャップ味だったら最初から最後までケチャップだけ。数少ないカナダの郷土料理プーツィンなんか、脂っこいプーツィン味で押しまくってくる。メイおばさんが作るサンドイッチとスープは、濃い味に囲まれた毎日の食生活の中で、ホッとする家庭料理の味だ。「アラスカに出発したら、しばらくこのサンドイッチ食べられないな」って言ったら、「あんた、アラスカなんて素晴らしいじゃないの。私もいつか行ってみたいもんだよ」って言って、店の名前の入ったボールペンくれた。メイおばさん、ありがとう。大事に使わせてもらうね。