おやじは荒野をめざす【カナダ編】

30年間続けた塾を閉じ、私は北極海をめざす旅に出た。物好きオヤジの旅の記録が教え子たちへの課外授業となってくれることを願って、このブログを綴る。

(13) アレンじいさん〈その2〉

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左:写真を撮ろうとしたら、慌ててボロジャンパー脱いで行儀よくカメラに収まった。  右:クルーザーを引っ張り上げ、さらにその後2時間かけて水洗い。海の男のルーテイーン。

 5時間のクルージングが終わりハーバーに戻った。「キヨシ、クルマを取ってくるから、このロープを持っていてくれ。クルーザーが波に持ってかれちゃうからな。しっかりホールドしとけよ」。アレンはフォードの馬鹿でかいピックアップトラックを水際まで進める。後部に取り付けられたクルーザーのキャリアは半ば水の中だ。トラックから降りたアレンは斜めに傾斜した滑りやすい桟橋を、体を少し右に傾けながらゆっくり歩いてくる。そして、「足元がだいぶ覚束ないな」という私の心配を一蹴するかのように、やおら水の中に靴のまま進み、クルーザーにロープを固定し始めた。8月とはいえ、北国の海は冷たい。しかも海底は海藻で滑りやすいというのにである。ロープを固定し終わり、今度はウィンチアップでクルーザーをキャリアに載せる。電動ウィンチなら簡単だろうが、アレンのは人力でガラガラカチカチ、ワイヤーを巻き取らなければならない。アレンが巻き取りの作業を始める。ガリ、リ、リ、リ、とギヤのクリック音がする。ゆっくり、少しずつ、クルーザーがキャリアに近づいてくる。アレンは何食わぬ顔で把手を回そうとするが、キャリアに近づくにつれ船体が水面から引っ張り上げられ、海水の浮力が減った分重くなる。そして把手を回すのがしんどくなる。アレンの顔は赤から青に変わってきた。「アレン、俺にもやらせてくれよ。アレンにばっかりやらしちゃ申し訳ないし、俺にも"海の男の仕事"を手伝わせてくれよ」。「そうか、お前もやってみたいか。ま、いいだろう、、、」とポジションを替わる時、アレンがゼイゼイ息を切らしているのがはっきり聞こえた。

 

 エドの家に帰ったのは夕食前だった。「キヨシ、今日の船旅はどうだった?」とキャリアナが聞いてきた。「サイコーだったよ。アレンは俺の人生の大先輩だよ」。そう聞いて、キャリアナも嬉しくなったのだろう、下の紙片を私に寄越した。

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アレンじいさん最高!私もアレンじいさんみたいな歳の取り方したいな、周りはちょっとタイヘンだけど。

【お知らせ】今後、Wi-Fiはもとより携帯も繋がらない場所に行きますので、今までのように定期的にはアップできなくなります。でも、週2回のペースは崩さないようにしたいと思っています。よろしく!