おやじは荒野をめざす【カナダ編】

30年間続けた塾を閉じ、私は北極海をめざす旅に出た。物好きオヤジの旅の記録が教え子たちへの課外授業となってくれることを願って、このブログを綴る。

(10) 何を食べりゃいいんだろう〈外食〉

 「今日は何食うかなぁ、、、めんどっちいなぁ、、、」と何度思ったことか。「サプリで済ませられればこんな楽なことはない」とか、「今日はあまりにも面倒臭いから食べるのやめちまえ」みたいに考えた時もあった。「わがまま+好き嫌いが多い」私がいけないんだけどね。朝はシリアルかなんかで簡単に済ませ、昼は外食、しっかり食べるというのが基本のパターンだった。「学校から片道10分以内」、「高くない」、「まあまあいける」と言う3つの条件を兼ね備えたレストランはそんなに多くはなかった。クラスでよく席が隣になるシャーリーは世話焼くのが好きみたいで、「あなた、今日は◯◯◯にすれば、、、」と、何を基準に決めてんのか分からないんだけど、大変ありがたいサジェスチョン suggestion してくれた。自分は昼ごはん食べないんだけどね。

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「救い」の内田食堂。決して安くはないけれど/カナダではマクドにもメープルマーク/概して寿司はヨーカドーの惣菜レベルだな/ステーキは焼き方がいい加減。ミディアムと言ってもウェルダンが出てくる
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内田食堂の鶏丼。小さな丼の中に本物の日本の味がある/頑張ったご褒美の「ラーメン+餃子」そして生チュー/お高級パスタ。大したことなかったかどね/アシュウィンの奥さんが作ってくれた本物のインド料理
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こと寿司のカツ丼は私の元気復活メシ/単なる天丼/単なる寿司/ばーちゃんの店のスープは旨いが高い/中華おやじの焼肉ライスは元気が出る
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最果てのレストランの最旨ハンバーガー/ビールのお供は焼き鳥って訳にいかずフィッシュ&チップス/左のおやじは汗水垂らして料理し、右のおやじは涼しい顔して会計係/カレーはどこで食べても安全パイ。「私にもわけて、、、」とスズメがチュンチュンやってくる/メニューをちゃんと読んだのに予想外の料理が運ばれてくる時もある

 こうして写真を並べてみたら、結構贅沢してるように思うかもしれないけれど、大体において「旨そやなあ、、、」と嬉しくなってパチリとやる。これの何倍もの「撮る気も起こらない」料理に耐えていると言うことです。ちなみに、レストランはどこも概して高い。それに加えてチップが20パーセントだから、よほど美味くないと元が取れないね。

 

(9) 英語で話すということ〈その2〉

 不思議なもんで、英語で話してて調子のいい日と調子の悪い日がある。調子のいい日は「おお、私の英語もあと少しで"ペラペラ"のレベルだな」といたって気分がいい。翌日悪かったりすると「昨日のは何かの思い違いになんだな、ショボボーン、、、」って感じ。何が原因なのか、いまいちよく分からないんだけどね、確かにあるようだ、調子のよし悪しというものが。それと、よく分かる人とよく分からない人がいるというのもある。その人の発音、ボキャブラリ、スピードなんかが関係してるかもしれない。同じように、英語で話してて、楽しいと感じる人と、つまんないと感じる人もある。これは日本語も一緒かあ。

 それでは、特に英語が難しく感じるケースをあげてみる。

①ネイティブ同士の会話。エドとキャリアナをみても、彼ら同士が話している時と彼らが私に話しかける時とでは、明らかにスピードが違う。てことは、私はまだアドバンテージ付きで、私は気を使ってもらってるんだね。

②電話。あらかじめ、何をどう話すか考えといた方がいい。面倒臭そうに対応されると心がめげそうになる。こっちが客なら「もっとゆっくり話して」と言ってやりゃいいけど、何かを頼む立場だと難易度が一段上がりそうだね。

③テレビやラジオ。ネイティブ同士のやりとりと同じで、聞き取りはしんどい。テレビドラマなど見ていると、頭の中で解釈が割れ、正反対の2通りのストーリーができたりする。「こいつは正義の味方だな」ってのと「こいつこそ真の悪党」みたいなね。どっちの解釈が当たってるか、クイズ番組のつもりで見ればいいかも。ラジオは、最初の頃はチンプンカンプンだった。でも、エドが勧めるので(彼は先生向きだと思うよ)、気が進まないながら何回も聞いてたら、だいぶ聞き取れるようになった。天気予報みたいな、同じ表現が繰り返し使われるのは意外と簡単。諦めず、嫌がらず、何事もポジティブに、、、というのが大事なんだね。

④数。特に金額関係。数字の聞き取りに計算が加わると頭がクラクラする。例えば「1個7ドル35セントだから6つ買うと、、、」みたいなね。買い物でキャッシュで払うなら、算数の「おおよその計算」を駆使して大体の金額を割り出し、ちょっと多めの、例えば50ドル紙幣 bill を出す。でも、いつしか財布は小銭でパンパンになる。小額ならまだいいが、万、10万以上になってくると、「損しちゃ大変」のプレッシャーがこれに加わる。以前行ったことがある床屋、カットのみだけど thirteen dollar で、日本のカットオフと同じだからまた行った。そしたら今度は thirty と言うじゃないか。変だなあと思いつつ30ドル出したら、笑いながらオーバー分返してくれた。分かっていても聞き取れない、あるいは聞き間違うってこともあるんだね。

 ま、でも、こんなこと、あまり気にしないで、どんどん話してみることだよ。買い物で、いつでもオーバー分が返ってくるかどうか、こちらは関知しないけどね。

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ずいぶんいろいろな人たちと話したなあ、友達になったなあ。日本にいる時よりウン倍も持てたなあ、、、英語はやっぱ楽しいぞ!

 

(8) 英語で話すということ〈その1〉

 ビクトリアに来てちょうど1ヶ月くらい経った時のことだ。時差ボケはとっくに治ったし、気がかりだった食べ物にも意外と順応してる。こっちの食べ物は脂っこいからどうかなあと心配だったんだけど、胃腸の方が諦めて、食べ物に合わせてくれているのかも。ウォシュレット無いのも大丈夫(そういやトライもウォシュレットなかったな)。ホームステイでは、下宿屋のおじさん・おばさんに世話になってる学生みたいな立場だから、ちょっと面倒なところはある。キッチンやバスルームの使い方とかゴミの分別、どことどこは飲食禁止とかね。カナダ人は大らかかつ大雑把で細かいこと気にしないというか、全然気づかないみたいなところがある。でも、1人だけ例外がいて、それがホストファザーのエドなんだな。だから、細けー、面倒っちーって思うことはあるけど、ほら、そこは "大人の対応" だよね。そもそも安い値段で住まわしてもらってるんだし、その家に入ったら、その家のルールに従わなくちゃいけないのは万国共通。まさに  When in Roma, do as the Romans do. (郷に入らば郷に従え)ってことです。でも、どうにもならないのが、英語のやりとりがうまくいかない時の苦痛とストレスなんだ。「自分の英語が下手っぴいなのがいけないんだと自覚している→だからこそ上手くなるために頑張っている→でも、そう簡単に上達するもんでもない→だから現実の生活の中で、自分がうまくしゃべれないことが悔しく腹立たしい、うざい」という負の連鎖、ジレンマだね。こちらが言うことは7、8割は理解してもらえてると思う。でも、それを聞いて相手のネイティブが、「こいつはまあまあしゃべれるな」と思って、そう思ってくれること自体は嬉しいんだけれど、向こうのペースでベラベラってやられると、本当にしんどい。1回や2回なら Pardon?(すいません、もう一回言ってください)って聞き返せばいいけど、向こうがしゃべる度にPardon? て言ってたら、「1日は Pardon? に始まり Pardon? に終わる」になっちまうよ。だから、相手に対する気遣い半分見栄半分で Yeah. とか Oh, I see. とか、分かったようなことを言ってしまう。相手はそれに気を良くして会話がさらにスピードアップでもしようものなら、、、自分のリスニング能力のアップのためには Pardon? をめげずに連発した方がいいんだろうけどね。エドはインテリなので、話していると難しい内容になることもある。ある時、イスラムの歴史の話をしていて「ムスリムイスラム教徒のことだよ)にはホモが多くてな、、、」なんて言ってニヤッて笑うんだ。歴史の話はあまり聞いてなかったけど、ここんところだけは耳に入ってきて、マジかよ、あの髭面の、、とちょっと質問したら、それから延々1時間。「訳の分からない話を1時間、時折分かった風に頷いたりしながら聞き続ける」という苦痛。やっぱ、難しい内容は避けて、楽しい話、若者ならファッション・スポーツ・ゲーム、それとあっち関係の話とかね。そういうのは人種・宗教が違っても、みんな興味あるから、話が尽きないし、英語のいいトレーニングになる。前にも書いたけど、「ネイティブと恋に落ちるのが一番の英語の勉強」ってのは、そう言った意味で言えてると思うよ。おっと、私はその方法、試したことないけれどね。

 

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人は人と仲良くしなくちゃいけません。人から学ぶものは無限だからね。下手くそ英語でも気にしないでどんどん話してみる。英語は上達するし、友達たくさんできるはずだから。

▶︎(9) 英語で話すということ〈その2〉に続く 

 

 

 

(7) カナダ人は日本のこと、どう思っているのかな

 ビクトリアの郊外に、観光客がよく訪れるブッチャートガーデンというところがある。ダウンタウンからバスで一時間。東京で言うと、向ヶ丘遊園みたいなところかな、ウン倍も広いけれどね。ローズガーデンとか人工的なポンドや噴水とかもあって、工夫が施されてそれなりに綺麗なんだけど、実は人の作った擬似自然みたいなものに私はほとんど興味がない。カナダ人ががどういう美意識を持っているのか、ま、センスみたいなものだね。さらに言うと、日本と欧米との文化の違いみたいな、そんなことが少しでも理解できれば面白いと思って高い入園料を払ったんだ。

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欧米人の日本文化トンチンカン理解の逆バージョンが日本にもありそうだな、渋谷のハロウィーンとかね。

 素直な気持ちであるがままのガーデンを受け止めようとしたけど、やはりつまらないものはつまらなかった。日本庭園というのもあって、それがまたひどかった。お金をかけて、何とか日本風 Japanese Taste を演出しようとしているんだけど、逆にそれが気に触る。なーんだ、全然分かっちゃいないな。そもそも、日本的なるものを外国に移植するってのに本質的な無理があるんじゃないか。特に庭園なんかはね。現在の日本は、文化だけでなく工業製品なんかも海外でメチャ売れの大人気だ。だけど、トンチンカンの見本のようなこの日本庭園を見ていると、日本文化が欧米人にどのように見えているのか怪しいものだと思い始めた。尾形光琳とか北斎なんか(おっと、、、知らない人は美術の資料集調べて見て、必ず載ってるから)は海外で高い評価を受けているようだけれど、例えば日本の絵画にある「間」、空白の美みたいなものを彼らは理解しているんだろうか。日本としても、日本製品 Japan Product の売込みばかりでなく、日本文化を理解してもらうようにもっと努力と工夫をすべきだな。「それにしても、日本の外務省はこれまで一体何をやってきたんだろう。ボーッと生きてんじゃねーよ!」みたいな気持ちになってきた。

 日本はアジアの国々の中で、独特の道を歩んできた国だと思う。歴史の授業で習ったように、大昔から大陸文化の影響を受けつつ独自の文化を築き、明治維新以降の150年でも、欧米の法や政治の制度・工業技術・文化を取り入れ、様々な分野で本家を凌ぐレベルにまでそれを発展させてきたんだ。「外から取り入れること」と「それを独自に発展させること」において、日本ほど優秀かつ巧みな国は世界的に見てほとんどないんじゃないかと思う。現代の日本文化だって大人気だよ。こちらには中華料理はもちろん、インド、トルコ、韓国、ベトナム、タイ、ギリシャなど、様々な国の料理を食べさせるレストランがある。その中で、日本レストランはちょっと別格の扱いと評価を得ているようなんだ。日本食は美味しい delicious だけじゃなくて健康によく healthy 、さらに二つのエコ ecological(環境に優しい)と economical(経済的)を併せ持つものとして、今、新たなブームになってきている。クルマ、電化製品、アニメ、洋服、文房具、ウォシュレット、、、日本製品 Japan Product は大人気だし、圧倒的な信頼を勝ち得ている。カナダで「日本から来ました」と言うと、「トヨタは素晴らしいね」、「パナソニック製品は最高さ」、「ユニクロヒートテック無しじゃカナダの冬は越せないよ」とか返ってきて、少し羨望 envy を含んだ目で見られるんだ。欧米人が日本に対して「東洋の神秘 mysyerious 」とか「東洋の奇蹟 miracle 」なんて言うのをよく耳にするけど、そこには「優秀で素晴らしいんだけど、ちょっと理解できないとこもあって、何だか不思議 fantastic 」みたいな思いが含まれているのかな。そんな思いを抱きながら、トンチンカン庭園を後にした。

 

(6) なぜ英語を学び直そうと思ったのか

 実はね、英語には忘れられないことが二つあるんだ。

 今から半世紀前。中学1年の、英語を習い始めて数ヶ月が経った頃だった。最初は辞書のhとnを見間違えたりしたけど、イギリス帰りのお洒落なM先生のおかげで英語がだんだん好きになった。んじゃちょいと英語でガイジンと話してみるかって、放課後、友達誘って制服のまんまで、自転車で1時間の調布の米軍キャンプに行ってみた。米軍キャンプのフェンス内では、アメリカ人の子供たちがバスケットボールをやっている。ジーパンに柄のあるシャツ、多分マドラス柄だったと思うけど、それをズボンにたくし込まずに shirt-out に決めてる。しかもやっているのがバスケ。当時の日本の子供にとって、人気のスポーツと言えば野球か相撲っていう時代にだよ。どういう風に声を掛ければいいんだろう。Hi とか Hey かなぁ。喉元まで上がってきている最初の英語の一言が出そうで出ないんだ。その代わり、一般の日本人がアメリカ人に話しかけていいのかとか、シカトされたらどうしようとか、どうでもいいようなことが頭に浮かぶ。もう一度声を出そうとする。でも、出ない。いや待て、ここまで来て何を迷ってるんだ。ちょいと声を掛けるだけのことじゃないか。大げさに考える必要なんてない、そんなの、分かってるんだけど。「よし!」っと深呼吸してみる。でも、出ない、出ない。友達が怪訝な顔でこっちを見てる。やっぱ、出ない、出ない。どーしても、出ない。要はビビってるんだろ、、、気持ちが折れるって、こういうことなんだね。結局、何もできなかった。何もしゃべれなかった。黙って自転車漕いですごすごと帰宅した。それにしても、あの米軍キャンプのフェンスは高かったな。今でもはっきり覚えてるよ。

 もう一つはトライ時代だ。教え子がドイツからの友達を何人か連れて来たので、私は塾の方針や指導内容、なぜ日本には"塾"というものがあるかなどを、怪しい発音ながら中学レベルの単語で説明した。ペラペラとはいかなかったけれど、なんとかかんとか説明した。でも、質問受ける番になると、私の英語の弱点がバレまくった。上手く聞き取れない。ドイツ語訛りのせいも少しはあったかもしれないけれどね。トライの子供たちは皆 "?" の表情でこちらのやりとりを眺めているじゃないか。授業で「英語は役に立つ勉強だよ。日本語では友達は1億人くらいしかできないけど、英語だと30億人くらいできるんだよ」なんて言ってたくせに、これってちょーカッコ悪いとしか言いようない。クヤシーとしか言いようがない。

 母親が元気だった時、よくこんなことを言っていた。「昔はお金がなかったから、お前を留学に出すことができなかった。でも、これからでも、もし外に出るチャンスがあったら、是非そうするといい。外の世界から、この慎ましくも狭々しい日本、自信を失った日本を見つめ直して来い、、、」。そして母親があの世へ去った後には、私が留学するのに丁度いい額だけのお金が残されていたんだ。中学1年で出会い、働くようになってからも何かと縁のあった英語。長年の付き合いのお陰で少しは話せるようになったけど、それ以上にはならない中途半端な英語に決着をつけたいと思った。だから私は今、若い子たちに交じって、懸命に英語と格闘してるってわけさ。 

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Writingは得意。知っている単語で書けばいいからね。Readingは予習が必要だ。「単語力がない+物覚えが悪い+物忘れが激しい」から、若い人たちの倍は勉強しなくちゃいけない。こんなに真面目にやったのは、中学生以来だ。最後の写真はSSLC(基礎英語)の修了証。

 

 



(5) 初めての授業〈その2〉

 でもね、不思議なもんで、ホワイトボードを背にして皆の前に立つと、トライで授業やってた時の感じが戻ってきて、さっきの焦りはどこかへ消え去ってたんだ。

My name is Kiyoshi Inoue and came here from Japan just only a few days ago.  I'm now sixty-six, the oldest in this school, maybe.  My purpose of visiting here is, , , 

かなりいい加減な発音だし中学レベルの単語ばかりなんだけど、言葉がうまく続いて出てくるんだ。私が教えてきたのは高校入試用の受験英語だけど、それはそれで十分役に立つということだな。

 次の Writing のクラスでは、皆が自分の好きなものについて述べ、最後に新入生の私が自己紹介するという形だった。ゲームが好きとか、日本のアニメ最高、音楽=命みたいに、それぞれが順繰りに発言する。さっきのクラスでは自分の趣味についてカメラ、トレッキング、フライフィッシングとか、ホワイトボードで図解までして説明した。同じメンバーもいたので、繰り返しじゃつまらないし、さてどうしたものか、、、と考えていたら、すぐに自分の番になってしまったんだ。で、

My favorite thing is, , , well, , well, well, , , oh! my favorite is young pretty girl!

が咄嗟に口をついて出た。一呼吸置いて大受け。正しくは a を付けるなり girls とすべきだったんだけれど、自分でも言いながら可笑しくなって笑いを抑えられなくなった。そりゃそうだよ。みんなが真面目に発言してるのに、日本からの変なおっさんが一人だけ妙なこと突然言ったんだからね。

 こうして、世界各国から集まった若者に交じって、私の英語の再挑戦が始まった。歳は気にすまい。若い奴らに負けても構やしない。何のアドバンテージも無しに、さあ、気合いで頑張るぞ。私の、実に40年ぶりの、生徒としての勉強はこうしてスタートした。

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次の日にいきなりテスト。いくら苦手のListeningとはいえトホホの点数。ブラジルやメキシコの子たちは、普通に半分くらい正答する。負けすぎだね、これは!

 

みなさーーーーーーーーーん‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️‼️

次回からブログの更新を〔日本時間の〕火曜日と金曜日にすることにします。

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 んので、よろしく!

 

(4) 初めての授業〈その1〉

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後列のコリン先生にはどれほど支えられ励まされたことか、、、

 ビクトリアに着いて次の日、とりあえず街の様子でも見てみようとホテルを出た。時差ボケで体がだるい。当たり前のことだが、モロ外国って感じで、右も左も分からない。行き当たりばったりで2時間歩き回り、どこかで見たような看板の前に出た。えっ!これってもしかすると見学予約を申し込んでいた?  そう、これが、これから半年間通うことになるSprott Shaw Language Collegeとの出会いだった。うーん、何だか「縁」を感じるなあ、、、

 オリエンテーションもそこそこに早速授業が始まった。1時間目はpronunciation、発音の授業だ。生徒は20人くらいでガヤガヤ騒がしい。席は好きなところへ勝手に座る。目の前のピンク髪の女の子は、先生が話し始めてもジュースを飲んだりスナック菓子をポリポリしたり。私にも勧めてくるが、とりあえずNo thank you.と返した。こちらでは授業中の飲食は自由と聞いていたけど、こういうことなんだな。ピンク髪は相変わらず口をもぐもぐさせていて、一方、私は先生に対する礼儀とかけじめとかいうことが頭をよぎったけれど、この「隔たり」がこそが文化、習慣の違いなんだ。カルチャーショックというと大げさ過ぎるけれど、やっぱり異文化体験は面白い。どっちが正しいとかいうことではなく、「違う」ということ自体がとても興味深いのだよ。

 クラスに日本人はいないようだ。一見日本人と見えたのは韓国、台湾からの子たちだった。他にメキシコ、ブラジル、サウジアラビアなど。年齢は20歳前後くらいかな。少なくとも30を越してそうな人はいない。賢そうなのもいれば、おしゃべりばかりで遊び半分みたいのもいる。皆、一様に明るく元気だが、外見、言葉、そして勉強に対する姿勢はバラバラで、この多様性がまた面白い。教室は English only。オールドミスっぽいおっかなそうな女の先生が、母国語のスペイン語でおしゃべりを続けているメキシカンを English, please! と一喝し教室がシーンとなる。先生がペラペラ授業の説明を始めた。中級クラスのはずなのに、容赦ない速さだ。何を言ってるんだろう、、、と思う間もなくニカッと笑って私に向かってお出でお出でしてる。流れと状況から考えて、どうやら私に自己紹介しろと言っているようだ。マジっすか、、、数日前に着いたばかりなのに、幾ら何でも、といくら尻込みしたところで、教室全体が「自己紹介すんの当たり前」の雰囲気だ。観念して、私は教壇に進み出た。

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左:兵役を終え公認会計士をしている韓国のエリート。優秀かつ謙虚。私より英文法知っている。グヤジー! 右:ブラジル三人娘。ピンク髪は先生の話全然聞かずにアニメばっか描いてるのにできる。

▶︎(5) 初めての授業〈その2〉に続く